あなたは、温泉に入ったことが、ありますか?
では、あなたは、源泉に、湧き出す源泉そのものに入ったことが、ありますか?
島根県の活火山・三瓶山の周辺には小規模ながらも個性的な温泉が点在している。
千原温泉『千原湯谷湯治場』はその中でも白眉といえる存在である。
以前は療養者専門ということで一般観光客などは断られていたらしいが、現在は方針を変え、誰でも行けるようになった。
ここの目玉はやはり浴室。小さめの浴槽の底には板が敷いてある。
その板の下、砂の中から無数の泡と共に湯が湧き出しているのだ。
湯の温度は35℃程度と非常にぬるい。おかげで夏場でものんびり浸かっていられる。真冬になるともうちょっと温度が欲しいところではあるが・・・(寒い季節は上がり湯用に五右衛門風呂を沸かしてくれている)
私は元来長湯が苦手で、どこの温泉でも大抵10分も浸かっていないのだが、ここだけは例外でいつも1時間は浸かりっぱなしである。
ブクブクとあがってくる泡の音とその感触、それに谷川のせせらぎも加わり、目を閉じていると自然に眠たくなってくる。他の温泉ではなかなか味わえない感覚がいいのだ。
風呂だけがいいわけではない。館内はいつも清潔で気持ちがよい。外観も味があるし、目の前の畑には季節ごとに花が咲き、冬の雪化粧もまた素晴らしいものだ。
ベタ褒めしたが、残念ながら全ての人にお薦めする事はできない。
まず、ぬるい湯は嫌だという意見をお持ちの方には絶望的に向いていない。露天がないと嫌だとかサウナがないと嫌だという方にも向いていない。歓楽的な要素も一切ない。
個々の好みがあるのは仕方ないが、湧き出す源泉に直接浸かれる温泉施設は貴重である。
沢山の人に知って貰いたいが、あまり混むと私が困る。ろくに影響力もないくせに複雑な思いでレポートをしたためるのであった。
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