鳥取県中部を流れる三徳川、その川沿いに大小の旅館が建ち並ぶ温泉地がある。三朝温泉である。
『三晩泊まって三度朝を迎えればどんな病も治る』という言い伝えからその名がついたと聞く。
私も高級旅館に三泊くらい余裕で出来る身分になりたいもんである。
さて、その三朝温泉の温泉街の外れ、住宅地の中に『株湯』という共同浴場がある。この小さな共同浴場は、山陰の一大温泉地・三朝温泉の元湯であり起源なのである。
源泉で45.6℃、ちらちらと赤茶色の湯の花が混ざる透明な湯が小さな浴槽に掛け流されている。やや熱くて長湯には向かないが、『株湯』はこの熱さがいいのだ。
狭い浴室にはシャワーもないが、そんな些細な事を気にする人はいない(と思う)。誰もが浴槽の湯を汲んで体も流せば頭も洗う。新鮮な湯があれば、余計な物は必要ないのである。
ラジウム温泉として名高い三朝温泉には『株湯』の他に共同浴場が1軒と無料の露天風呂が1つ、それに地元住民専用の共同浴場が私の知る限りでは4軒ある。自家源泉を所有する旅館も多く、確認した訳ではないが個人の住宅でも源泉を所有しておられる所があるという。
『株湯』は小さな共同浴場であるが、一大温泉地・三朝温泉の大きな顔でもあるのである。
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